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 実大免震試験機の仕組

 加力方向をx軸、鉛直方向をz軸、これらに直交する方向をy軸として、上部の反力梁(17)は、三次元空間の中で並進移動と回転の6成分が拘束される必要があります。上加振台(11)は、z軸方向に並進移動可能な下加振台上のリニアベアリングにのってx軸方向に高速で左右に動きます。三次元空間の中でy方向移動と3成分の回転を拘束する必要があります。

 全体説明図の上の(o, a, b, c, d, e)をクリックすることにより、各部分の写真を見ることができます。(o)をクリックするとこのページに戻ります。

<鉛直動的ジャッキと下加振台>
 鉛直動的ジャッキ(06)は鉛直アクチュエータとも呼んでいます。1台当たり2,000kNの動的圧縮荷重を与えることが可能であり、24台(4x6)を設置しましたので、総計は48,000kNになります。実際の試験では余裕を持って利用しています。ジャッキのシリンダー脚部は基礎マット(厚さ4,500mmのプレストレスト・コンクリート)の上面に固定しています。内部のピストンの上部にはロッドがあり、シリンダーの中で上下に動き、ロッドの頂部に荷重測定のためのロードセル、さらに球面支承と平面滑り支承を介して剛強な下加振台(09)を支持しています。下加振台には、鉛直ジャッキからの上向の力、試験体からの下向きの力が作用し、曲面状に変形します。上記の球面支承と平面滑り支承は、この下加振台の変形がジャッキの動きに無理を与えないために設けられた仕組みです。
 以上のように二つの支承は面内変形を拘束していないため、下加振台はx、yおよびθzの3方向に拘束されていません。これを拘束するために、下加振台の四隅にストッパー・サイドローラーを設け、上下方向の移動のみを可能にしています。さらにθxとθyの二つの回転成分を拘束し、下加振台が並行を維持して上下移動できるように、やはり四隅に並行維持ジャッキ(07)を設置しています。各並行維持ジャッキにはピストンの上下に油圧室があり、対角に設置した並行維持ジャッキとの間で油圧室の上と下を反転して高圧の油圧で接続しています。製図に使われるワイヤーで繋いだ平行定規と同じ仕組みが働き、下加振台は並行を保って上下にのみ動くようになっています。

<水平動的ジャッキ>
 水平アクチュエータとも呼んでいます。安定した平面内の動きを確保するために、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の動的試験機(SRMD)と同様に、4本の動的ジャッキを平行ではなくV字型に設置しました。水平ジャッキは左右に1,300mm、800mm/secの最大変位、最大速度の範囲で大きく動き、シリンダー内のピストンに取り付くロッドは、加振台側にのみあり、反力壁側にはロッドはありません。油圧を受けるピストンの受圧面積はロッドのある側は、無い側の丁度半分なので、ロッドが伸びる場合に発揮する力は大きいですが、縮む場合の力は半分になります。上加振台の左右に設置した総計4台の水平動的ジャッキの力の合計が試験体に作用します。

<反力壁、反力梁>
  厚さ4.5mの基礎マット上に構築されたロの字型の反力壁は、厚さ3.5mの剛強なプレストレスト・コンクリート構造です。縦横に十分な配筋をしているだけでなく、十分なプレストレスを導入してあります。この南北の反力壁上に、鉛直剛性が大きく水平剛性の十分小さな積層ゴム(16)を12台設置し、この上に反力梁を載せています。これらを48束のPC鋼より線(7本より線(φ12.7)を12本並行に束ね外径は85mm)(16)により、反力壁の基礎マット下面から反力梁の上面まで14m以上の長さにわたり50,000kN以上の引張力で締め付けています。この仕組により、反力梁はz方向、θx、θyの方向にしっかりと拘束されます。この中で、x方向、y方向、θz方向には小さな水平弾性剛性(12台の積層ゴムの剪断剛性と鉛直に設置したPC鋼より線の向きが変わることによる幾何剛性の和)で支持されます。
 上加振台と反力梁の間に試験体を設置し、試験中に大きな圧縮荷重(例えば30,000kN)を作用させると、反力梁に上向の力が作用し、上記の12台の積層ゴムと反力壁に与えたプレストレスが30,000kNだけ減少し20,000kNになります。このとき12台の積層ゴムは1mmほど伸び上がりますが、大きな大きな圧縮力は残存します。剛強な反力壁に与えていたプレストレスによる圧縮力も同様に20,000kNまで減少し、反力壁上面も若干伸び上がります。ただし、この反力壁の断面積は十分大きく伸び上がり変形はほとんど無視できます。
 上向の力を受ける反力梁は、その両端のPC鋼より線を引っ張り上げているように見えますが、実際の力の流れは、12台の積層ゴムに与えていた初期圧縮力が低下することによって、この上向の力が伝達されます。PC鋼より線の全長は14mであり伸び歪みは非常に小さく、PC鋼より線の軸力はほとんど変化しません。プレストレストコンクリート構造の優れた特徴を活用しています。

<計測リンク>
 V字型に設置した水平動的ジャッキと同様に、4,000kNロードセルを組込んだ2本の軸剛性の大きな鋼管(18)をV字形に、剛強な反力壁から反力梁平面の図心を通して設置しているので、反力梁はx方向、y方向に弾性的に拘束されます。 この計測リンクを下フランジの高さに接続することにより、試験体の剪断力によって反力梁に生じるy軸回りの捻りモーメントを極力小さくしています。1500kNロードセルを組込んだ軸剛性の小さな2本の平行計測リンク(19)により、反力梁はθz方向に弾性的に拘束されます。
 これらの4本のリンクの両端部分には超強度鋼を用い、断面積を小さくし断面形状を板状または円柱状にして曲げ剛性を小さくしています。機械的なピン構造ではないため軸方向のガタが無く、端部が曲りやすいため反力梁の微小な変位によってロードセル部分に生じる曲げ応力を小さくすることができます。


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